スティーブン・R・コヴィー

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掲載の本

7つの習慣 - 成功には原則があった - 
キング・ベアー出版

著者紹介

英国「エコノミスト」誌によれば、コヴィー博士は今、世界で最も大きな影響力を持つビジネスの思想家とされている。博士は、ハーバード大学でM,B,Aを取得後、ブリガム・ヤング大学で博士号を取り、同大学の組織行動及び経営管理の教授を勤め、約30年間にわたり、アメリカの最優良経営コンサルタントとして活躍している。コヴィー・リーダーシップ・センターの創立会長。世界各国の政府やリーダーのコンサルタントとして活躍中。著者の『7つの習慣』、『First Things First』『Principle Centered Leader ship』は、いずれもミリオンセラーを記録している。

本の概要

今世紀最高の思想家と評される博士の名著の一つ。1997年度、年間売上ベスト1となり、現在までで、国内で100万部突破の大ベストセラー。世界中では、すでに30ヶ国語に翻訳され、売上は1,500万部を突破。まさに出版界の金字塔ともいえる最高傑作。

博士は、1776年以降のアメリカで出版された『成功』に関する文献を全て読み、その結果、驚くべき傾向に気が付いたのである。はじめの150年間の文献と最近の50年間の文献を比較すると、その内容は、著しく対照的だったのである。会社、家庭、個人、人生の全てに成功には原則があることを発見した博士の力作。激しい時代の変化に生きる人々に充実した人間らしい生活を営む道を本書は示している。何度も読み返した、私のバイブル的本です。忙しい方は、第4と第5の習慣だけでも読んでみることをお勧めします。

目次

第一部 パラダイムと原則について

ア 人格主義

原理原則を体得し人格に取り入れる以外に、真の成功はありえないし永続的な幸福も手に入れることは出来ない。状況を変えたければ、まず自分を変えなければならない。自分を効果的に変えるには、まず自分の知覚、ものの見方そのものを変える必要がある。
(パラダイム転換):反対語→個性主義

イ 農場の法則

必要な務めを果たし、作業を行わなければならない。そこに近道はなし。人の成長や人間関係においても同じ事。近道を探すことは落胆と、フラストレーションをもたらすだけである。パラダイム:私たちの行動や態度の源になっている。大きな改善を望むならパラダイム転換が必要

ウ 自然の法則

人は皆、自分の生活や人間関係を、経験や条件付けによって作られたパラダイム、あるいは知覚のレンズを通して見ている。しかし、このパラダイムという地図は、その示す場所とは違うものである。地図はあくまでも主観的な現実にすぎず、その場所を表現しようとする努力に過ぎない。客観的な現実は(場所そのもの)人間の成長や幸福を司どる「灯台」の原則からなっている。「原理原則は破ることは出来ない。それを破ろうとするば自分自身が破れるだけだ。」原理原則、自然の法則は人間の普遍的な意識、もしくは良心に属するものである。

エ インサイド・アウト

自分自身の内面(インサイド)を変えることから始めるということであり、自分自身の根本的なパラダイム、人格、動機などを変えることから始めるということである。自分自身を改善せずに他の人との関係を改善しようとすることは意味のないこと。自分がなる…という考え方。外(アウトサイド)からもたらされた永続的な問題解決や幸福、あるいは成功といったものはないのだ。

オ 習慣を確立する三つの要素

知識(何をするのか、なぜするのか)+スキル(どうやってするか)+やる気(実行したい気持ち)

カ 成長の連続体(七つの習慣)

①依存→「あなた」というパラダイム。「あなた」のせい。「あなた」がやってくれないから…②自立→「私」というパラダイム。「私」の責任だ。「私」が結果を出す。③相互依存→「私たち」というパラダイム。「私たち」はできる。「私たち」は協力する。依存している人は欲しい結果を得る為に他人に頼らなければならない。自立している人は自分の努力によって欲しい結果を得ることができる。そして、相互依存している人々は、自分の努力と他人の努力を引き合わせて最大の成果を出すのである。

キ 効果性のパラダイム

真の効果性には二つの側面がある。P/PCバランス(黄金の卵とガチョウの健康のバランス、または目標達成と目標達成能力(資源)のバランス。)人の手はお金で買うことができるが心を買うことは出来ない。熱意と忠誠心は人の心の中のものである。創造力、創意工夫、改善の精神は頭の中に宿るのだ。組織のPC(人材)を育成する為には、従業員を顧客同様に扱う必要がある。従業員が率先力を発揮し、熱意と知恵を自発的に活かしてもらう以外に成功する方法はないのだ。

第二部 私的成功

(1) 第一の習慣:主体性を発揮する

ア 自己責任の原則

人間には他の動物にはない自覚、想像力、良心、自由意志という独特の性質を持っているため、刺激に対して、自分の反応を選択する能力(力)をもっている。刺激と反応の間に選択の自由を持っている。主体性を持つということは「人間として自分の人生に責任をとる」ということである。

私達の行動は周りの状況からではなく、私たち自身の選択によって決まるのだ。主体性のある人は、「自分の反応を選択する能力(力)」を発揮している。彼らは自分の行動に対する責任をとり、状況や環境、または条件づけのせいにしようとしない。

彼らの行動は自分の価値観に基づく意識的な選択の結果である。自分の身に何が起きるかではなく、それにどう反応するかが重要なのだ。厳しい状況下でも率先力を使って「積極的な反応を選択する」ことができる。

「我々はどう反応するか。我々は何をするのか。我々は、この状況下でいかに率先力を発揮するか。」率先力とは自分から進んで状況を改善する行動を起こすことである。反応的な人→決定論的なパラダイムを持つ。責任は自分にはない、自分の反応は選ぶことが出来ない。自分の状況を全て外的な要因(他人、環境)のせいにする。主体的な人にとって、「愛」は動詞である。愛は具体的な行動である。犠牲を払うこと、自分自身を捧げる事である。愛は行動によって具現化される価値観である。

イ 影響の輪と関心の輪

①関心の輪を描くことで、自分が関心を持っている事柄と関心を持っていない事柄を振り分ける事ができる。②影響の輪を描くことで、自分の関心事の中で自分が直接コントロールできる、あるいは大きく影響できるものを示すことができる。

主体的な人
努力と時間を影響の輪に集中させ、自分のコントロールできる事柄(影響の輪)に集中することにより、積極的なエネルギーを生み出し、それによって影響の輪を拡大する。

応的な人
自分のコントロールできない事柄(関心の輪)他人の欠点、周りの環境などに集中することにより、消極的なエネルギーを生み出し、影響の輪を縮める。

「私と妻は、息子の欠点、周りの目や他人の言動などとても気にしていた。しかし、これらの事柄は全て関心の輪にあった。そうしたことに努力を集中させる限りは、全く埒があかなかった。関心の輪に集中することで、自分の無力感と物足りなさをさらに痛烈に感じて、息子の依存性を強めるだけだった。影響の輪に集中し、自らのパラダイムを変えることになって、初めて積極的なエネルギーを作り出すことが出来た。そして自分達を変えることによって、やがて息子にも影響を及ぼせるようになった。

状況について心配するより自分自身に働きかけることによって、はじめて状況そのものに影響を及ぼすことが出来たのである。「持つ(関心の輪)」と「なる(影響の輪)」:~さえ持っていたら…と私は〇〇になる。主体的なアプローチは、インサイド・アウト(内から外へ)で変わることである。自分のあり方(自分の内にあるもの)を変えることにより自分の外にあるものをプラス方向に転換させることができる。つまり、私はもっと創造的になれる、もっと協調性のある人になれるという考え方である。

本当にその状況を改善したいのであれば、コントロールできる唯一のもの(自分自身)に働きかけることである。妻を正そうとすることをやめて、自らの欠点を取り除くことに働きかけるのである。素晴らしい夫になることに集中し、無条件に妻を愛し、支えるようにすることである。影響の輪に集中する方法はいくらでもある。より良い聞き手になること、もっと愛を示す伴侶になること、幸福になること。幸せになると決めて、コントロールできない要因を受け入れて、コントロールできるものに努力を集中させることができるのだ。

主体的な生き方     反応的な生き方   


(2) 第二の習慣:目的を持って始める

ア 自己リーダーシップの原則

目的を持って始めるということは、目的地をハッキリさせてから旅立つことである。最も基礎的な応用は、全ての行動を測るための尺度として、人生の最後の姿を描き、それを念頭において今日という一日を始めることである。そうすれば、自分にとって何が本当に大切なのかをベースに、今日の行動、明日の行動、来月の行動を計画することができる。自分の人生の目的を明確にすることが大事である。

自分自身にとって何が本当に大切なのかが分かっていて、そのイメージを常に頭の中に植付け、毎日その最も大切な事柄を優先する形で自己管理すれば、人生はなんと大きく変わってくることだろう。もし梯子を掛け違えていれば、一段上るごとに間違った場所に早くたどり着くだけである。葬儀で述べて欲しい弔辞を注意深く見つめれば、あなたの本当の定義を見つけることができる。それは今まで考えていた成功とかけ離れたものかもしれない。名声、業績、お金などは、あなたが本当に考えている成功と何ら関係がないかもしれない。

全てのものは二度作られる
①知的な第一創造(住宅建設の設計図、人生の脚本) ②物的な第二の創造(実際の建築作業、人生の行動)第一の習慣→「あなたは創造者である。」 第二の習慣→「第一の創造を行う。」

イ リーダーシップとマネジメント:二つの創造

リーダーシップ(第一の創造)
人生の目標を明確、何を達成したいのか、道はそれていないか、軌道修正。

マネジメント(第二の創造)
効率的な手段、どうすれば目標を達成できるか、具体的な行動。「マネジメントは成功の梯子を効率よく昇ることであり、リーダーシップは掛け違っていないかどうかを判断することである。私たちはマネジメントのパラダイムにとらわれすぎて、リーダーシップを疎かにしがちである。」

目的を持って始めるということは、生活の中での様々な役割を果たす時に、明確な価値観(目先の事にとらわれずに、本当に大事なこと、重要な事は何か?どうありたいのか?)に基づいて行動することである。自分の第一の創造に対する責任をとることである。正しい原則に基づいた憲法(ミッション・ステートメント)を持つ人は確固たる中心を持ち、全ての決断をそれに照らし合わせ、自分の時間、才能、エネルギーを効果的に使うことができるのだ。その中心が安定性、方向性、知恵、並びに力の根源になる。(お金中心だったら…仕事中心だったら…)だからこそ、個人の憲法が必要。

ウ 原則中心の生活

正しい原則を生活の中心におけば、自分の安定性、方向性、知恵、力を開発していく為のしっかりとした土台を得ることになる。原則はそういう一貫した生活の中心になりえる唯一のものである。原則中心の場合、ころころと変わる人やものに頼るような他の中心とは違い、安定性は原則の普遍性に基づくものになる。そして、継続的にそれに頼ることができる。

主体的な人間として、人生の中で自分はどうありたいのか、何をしたいのかを表現することができる。これを文書にすることは、個人的なミッションステートメント、個人的な憲法を書くことである。自分が後一年しか生きられないとしたら、人は真剣に人生の中で何が最も大切なのか、どうなりたいのか、何をしたいのかを考えると、敬虔な気持ちを持つようになる。今日や明日の目の前の事よりも、長期的かつ広い視野で物事を考えるようになるのである。組織(会社、家族などを含めて)の抱える基礎的な問題の一つは、人は他人の決めたことに対しては決意しないということだ。それを心から受け入れることは、どうしても出来ないのである。


(3) 第三の習慣:重要事項を優先する

ア 自己管理の原則

もし、常日頃から行っていれば、あなたの私生活の質を著しく向上させる行動が一つあるとすれば、それは何だろうか?

効果的なマネジメントの定義は、「重要事項を優先する」ことである。リーダーシップは「重要事項」とは何なのかを決めることであり、それに対して、マネジメントはそれを優先して、毎日、瞬間瞬間において実行することである。「成功者達の共通点は、成功していない人たちの嫌がることを実行に移す習慣を身に付けているということである。彼らにしてみても、必ずしも好きでそれを行っているわけではないが、自らの嫌いだという感情をその目的意識の強さに服従させているのだ。」第三の習慣の本質は「感情を目的意識に服従させる」ことである。

イ 生き方を変える第二の領域

緊急 緊急ではない
重要 第一領域
■ 締め切りのある仕事
■ クレーム処理
■ 切羽詰った問題
■ 病気や事故
■ 危険や災害
第二領域
★ 人間関係作り
★ 健康維持
★ 準備や計画
★ リーダーシップ
★ 真のレクリエーション
★ 勉強や自己啓発
★ 品質の改善
重要ではない 第三領域
■ 突然の訪問
■ 多くの電話
■ 多くの会議や報告書
■ 無意味な冠婚葬祭
■ 無意味な付き合い
第四領域
■ 暇つぶし
■ 単なる遊び
■ だらだら電話
■ 多くのテレビ
■ その他、意味のない活動

緊急性のない重要事項を行うには、より高い率先力と主体性が必要になる。新しい機会を活かし大切な目的を成し遂げる為には、自分から進んで行動を起こさなければならない。第二の習慣で自分の目的を明確にしていなければ、緊急を要するものばかりに反応してしまうことになる。誰もが第二領域の大切さを理解しているが、それらは緊急ではないから、いつまで経ってもなかなか手がつけられない。

第一、第三領域の事柄は、向こうから働きかけてくれるが、第二領域は自ら進んで働きかけなければならない。第三、第四領域から時間を取る。第二領域の優先課題を行う為には、一見重要に見える緊急な活動(第三領域など)に「ノー」と言わなければならない。原則そして個人のミッションステートメントに基づいて行動すること。第二領域を行っていけば、効果性は高まり、それに伴って第一領域の問題は徐々に無くなってくる。そして、やがてそれは、対応できる範囲内に収まることになるだろう。なぜなら、あなたは問題の根っ子に働きかけているのであり、問題が発生する以前に、それを防ぐ活動を実施しているからである。

※パレートの法則(80%の結果は20%の活動から生み出される。)第二領域の時間管理の目的は、緊急性ではなく重要性に集中するものであり、P(目標達成)とPC(目標達成能力)のバランスを向上させるプロセスである。緊急な問題を処理する活動よりも、事前の予知、予防などの第二領域の活動に集中するツールが必要である。これを実行する最も良い方法は、週単位で時間を計画することである。第二領域に集中することが、あなたの生活にどれほどの影響を及ぼすか…!

① 長期的な計画: ミッションステートメント→役割→目標
② 一週間の計画: 役割→目標→計画(自分で行う、またはデレゲーション)デレゲーションによるPとPCの双方を高める。

ウ 目標を達成する方法

① 時間を投入して自分で実行する。→生産者
② 他の人に仕事を任せる。(デレゲーション)より少ない入力でより多くの出力を出すことができる。→マネージャー

「使い走りのデレゲーション」
あれやれこれヤレの、一対一の管理。
「完全なデレゲーション」
相手の自覚、想像力、良心、自由意志を尊重するパラダイムに基づく。手段ではなく結果に焦点を合わせる。手段を選択する自由を相手に与える。結果に責任を持たせる。この方法は、当初は時間がかかるが、のちに何倍もの効果を生み出す。

エ 完全なデレゲーションを行う為の5つの条件

① 望む結果
手段ではなく、結果に焦点を合わせる。出すべき結果について明確な相互理解を得る。
② ガイドライン
結果を出すにあたり、守らなければならないルールを明確にする。必ず失敗すると分かっているやり方があれば、それを明確にする。結果についての責任は相手にとらせる。
③ 使える資源
望む結果を達成する為の資源(金銭的、技術的、組織的、人的)
④ 責任に対する報告
報告と(自分の仕事に対する)評価が具体的にいつ行われるかを設定する。
⑤ 履行(不履行)の結果
賞罰(金銭的な報酬、昇進など)を設定する。

責任を引き受けた相手は、自分が自らのボスになり、「望む結果」に対する決意と自らの良心によって管理される。同時に、「望む結果」を達成する為に、正しい原則の範囲内で必要な、ありとあらゆる行動をとるための創造的なエネルギーを自ら引き出すのである。効果的なマネジメントの鍵は、テクニック、ツール、外的な要因にあるのではない。それは内的なものである。第二領域のパラダイムによって、「緊急性」ではなく「重要性」のレンズを通して物事を見る力を身につける事にあるのだ。 面白いことに、「七つの習慣」はすべて第二領域に入っている。全てが重要であるが、緊急ではない。しかし、常日頃実施していれば、あなたの生活に大きな結果をもたらすものばかりである。

第三部 公的成功 

ア 相互依存のパラダイム

容易な方法で人間関係を築き、相互依存関係を作ることは絶対に不可能である。しかるべき道を歩まなければならない。自分が自分に対して成功を収める代価を払っていなければ、人ともに成功するなど絶対にあり得ない。「行動で作った問題は言葉でごまかすことは出来ない。」 相互依存の関係は、自立した人間にしか出来ない。人間関係を築き上げる為には、まず自分の内面であり、自分の影響の輪の中心であり、自分の人格を育て上げることである。

イ 信頼残高という名の財産 (預金残高と同じ考え)

人間関係を作り、あるいは人間関係を修復する為には、相手に対する長期的な投資「信頼残高」を増やすしかない。人間関係を築くのに応急処置や、近道はあり得ない。親切、正直、約束を守るなどの行動を通して「信頼残高」を作っていけば、そこに貯えができる。継続的な「預け入れ」によって、高い「信頼残高」を維持できる。結婚などの最も日常的で身近な関係においてこそ、継続的な「信頼残高の預け入れ」をしなければならない。

人間関係を改善したければ、まずは「預け入れ」をすることである。多分最も大切な「預け入れ」は説教をせず、自分の自叙伝も挟まず子供の話を聞く事だろう。ひたすら聞いて、息子を理解しようとするのだ。息子に対するあなたの思いと、息子を一人の人間として認めていることを彼に感じさせることである。精神性の「預け入れ」を続ければ、信頼残高が増え、残高不足の額は徐々に縮小していくことになる。人間関係における「応急処置」は幻想にすぎない。

ウ 信頼残高を作る六つの大切な預け入れ

相手を理解する
本当に人を理解しようとすることは、最も重要な「預け入れ」の一つであり、全ての「預け入れ」の鍵である。まず相手を理解してからでなければ、その人にとって何が「預け入れ」になるのかを知ることは出来ない。相手の関心事とニーズに合っていなければ、預け入れのつもりでしたことでも「引出し」になることさえある。「預け入れ」をする為には、「相手の事を大切に思うのであれば、相手にとって大切なことを、あなたも大切に思う必要がある。」 それが大切な人であればあるほど、そうだ。

小さな事を大切にする
小さな心遣いと礼儀は、とても大切である。小さな無礼や不親切、無神経は、大きな引出しになる。人間関係において、小さなことは大きなことである。

約束を守る
約束を守ることは大きな「預入れ」であり、破ることは大きな「引出し」である。常に約束を守る習慣を育成すれば、信頼の橋を築くことになる。

期待を明確にする
人々は自分の持っている期待に照らし合わせて、相手を裁く。そして、自分の持っている基礎的な期待が裏切られたと感じれば、信頼の貯えが減少することになる。自分の期待は相手にも理解され、受け入れられていると思い込むことで、多くの大変な問題を作り出しているのである。だからこそ、最初から期待像を明確にすることは預け入れになる。最初は大きな時間と労力の投資が必要になるが、長期的な観点から見ると大きな時間と労力の節約になる。

誠実さを示す
一人に対する個人的な誠実さが、多数の人対しても信頼を築き、様々な「預け入れ」の基礎となる。誠実さの欠如は、信頼残高を増やす為の努力を全て台無しにしてしまう。誠実さを示す重要な方法の一つは、その場にいない人に対しても忠実になることである。そうすることで、その場にいる人々の間に信頼が育成される。

その場にない人を弁護することは、その場にいる人との信頼を保つことになる。(あなたが私と二人だけで話をしている時に、私が上司の悪口を言ったとしょう。次に私たちの間に問題が起きた時に、二人の関係はどうなるか?わたしがあなたの悪口を言っている姿を容易に想像できるだろう。私がどうゆう人間なのか、あなたは既に知っているからだ。

人を非難したり秘密を漏らしたりすれば、一時的な満足感という「黄金の卵」を一度は手にいれることができるが、しかしそれは「ガチョウ」を殺す行為であり信頼を無くしてしまう。)相互依存状態において誠実さとは、簡単に言ってしまえば、全ての人に対して平等に同じ原則に添って接することである。それを続けることで、人々はあなたを信頼するようになる。誠実さゆえに衝突や摩擦が起きることもあるだろう。最初はそれに反発する人もあるだろう。相手に対して正直にぶつかることは、大変勇気のいることである。そのために多くの人々は最も抵抗の少ない道を選び、人の陰口を言い、秘密を漏らし、他人の噂話に興じる。

しかし、長期においては、正直かつオープンに人に接した方が、人から信頼され、尊敬されるようになる。相手と対立するだけ相手の事を思っているということである。信頼されることは、愛されることよりも偉大である。そして長期においては、信頼されれば愛されるようになると、私は確信している。「99人の心をつかむ鍵を握っているのは、一人の人に対する接し方だ。」

「引出し」をしてしまった時は、誠意をもって謝る
信頼残高の引出しをしてしまった時には、誠意をもって謝れなければならない。誠心誠意を込めた言葉は大きな「預け入れ」になる。(私が間違っていた。)「行動で作った問題は言葉でごまかすことは出来ない。」間違いを犯すことは一つの問題であるが、それを認めないのはもっと大きな問題である。人は「間違い」を許してくれる。なぜなら判断を誤ったために発生するものだからである。しかし、間違いを認めずそれを正当化しようとする人に対しては、許してくれないものである。なぜなら間違いを隠そうとする傲慢さは、心のあり方の問題だからである。

愛の法則と人生の法則
私たちは、見返りを求めず無条件の愛という形で預入れを行う時、愛の基礎的な法則を守っていることになる。そうした行為で私たちは、相手に安定感と安全な気持ちを感じさせる。相手は自分の本来の可能性を発見し、発揮することができるようになる。人が反抗的になるのは、頭の問題ではなく心の問題である。そして心の問題を解く鍵は、「信頼残高の預入れ」をすることであり、相手に「無条件の愛」を示すことである。決して、「条件付の愛」を示してはならない。「大衆の救いの為に勤勉に働くよりも、一人のために全身を捧げる方が気高いのである。」

P(目標達成)の問題はPC(目標達成能力)の機会であるP/PCバランス
それこそ信頼残高を増やす良い機会であり、相互依存関係における生産性を大きく向上させる機会である。もし、親子関係において、子供の抱えている問題を単なる邪魔な重荷だと考えずに、子供との関係を築く良い機会だと解釈すれば、親子関係においは、一変するだろう。「本当に子供を助け、お互いの関係に投資する素晴らしい機会だ!」と考えるようになる。子供にとって、親が自分の事や自分の抱えている問題を本当に大切に思ってくれていると実感できる時、そこには強い愛と信頼の絆ができるのである。→「信頼残高の預け入れ」の増大。信頼残高というパラダイムを持つこと!!が重要である。

(2) 第四の習慣:Win-Winを考える。

ア 人間関係におけるリーダーシップの原則

Win-Winとは…
「自分も勝ち、相手も勝つ(それぞれの当事者が欲しい結果を得ること)」という考え方である。
これは単なるテクニックではない、人間関係の全体的な哲学である。全ての関係において常に相互の利益を求める心と精神の事であり、お互いに満足できる合意や解決策を打ち出すことである。

Win-Winは、人生を競争ではなく、協力する舞台とみるパラダイムである。しかし、ほとんどの人は人生を強いか弱いか、厳しいか甘いか、勝つか負けるか、食うか食われるかといった具合に、「二文法」で考えがちである。私はこの考え方には、基本的な欠陥があると思う。それは原則ではなく、力関係や地位などに基づいているからだ。

Win-Winの考え方は、全員を満足させるに充分な結果があるはずだ、というパラダイムに基づいている。ある人の成功は、他人の成功を犠牲にしなくても達成できる、という考え方である。全く新しい第三案の存在を信じることであり、相手や自分の考え方に限定される必要はなく、より良い方法があるはずだと確信することである。真の意味で人生は競争ではない、協力によって人生は生きたものになる。

Win-Lose(自分が勝ち相手が負ける)
ほとんどの人が生まれた時からこのパラダイムの脚本付けを受けている。価値は自分の中にあるのではなく外にあり、人の価値を解釈する為に他人との比較が行われる。(偏差値、成績、お金、出世)そこでは、内的な価値は全く認められず、全て外的な要因に基づき定義づけられる。

短期的なWin(相手を負かし、自分だけ勝つ)は長期的に見るとLoseになり再び取引は出来なくなってしまう。長期的観点から見れば、Win-LoseはLose-Loseを意味する。長期においては、両方が勝たなければ、両方の負けになる。だから相互依存の現実においては、Win-Win以外に現実的な方法はないのだ。

Win-WinまたはNo Deal(取引しない)
No Dealとは、双方が納得する案を見つける事が出来ない時は、「合意しないことに合意する」ということである。つまり、「取引しない」ということだ。Win-Winを達成することができなければ、No-Dealを選ぶ方が適当である。多くの場合、Win-WinまたはNo-Deaの態度で交渉に入ることが可能であり、それによりお互いが防衛的になることもなく、大きな自由を手に入れることができるのだ。

イ Win-Winを支える五つの柱

人格:人格こそがWin-Winの基礎であり、他の全ての柱はこれを土台にしている。誠実さこそが大事。① 成熟(勇気と思いやり)→成熟した人とは、自分の気持ちや信念を表現する「勇気」と、相手の気持ちや信念を尊重する「思いやり」のバランスがとれている人のことである。このバランスを確立していれば、相手の話を聞いて感情移入をすると同時に、勇気をもって自分の立場を主張することができる。

② 豊かさマインド→全ての人を満足させることが可能であるというパラダイム。「公的な成功」とは他人を負かすという意味ではない。関わっている全ての人が相互利益を獲得することである。③ Win-Winが本当に証明されるのは、自分の生活の中なのである。

関係:Win-Winの関係は、人格という土台の上に立てられ、維持されるものである。信頼残高こそがWin-Winの本質である。信頼がなければ、「開かれた相互の理解」など得られない。Win-Loseを考える人と接する時でも、関係作りが鍵を握る。集中すべき所は「自分の影響の輪」であり、(相手に誠意を示す、敬意を払う)信頼残高の預け入れを行うことによって、Win-Winを実行できるのである。

合意:Win-Winの実行協定 ①望む結果 ②ガイドライン(ルール) ③使える資源 ④責任に対する報告④ 履行・不履行の結果 「緑で清潔」の完全なデレゲーションと同じ。信頼がない人→人をコントロールまたは監視しようとする。(使い走りのデレゲーション)信頼残高が高い人に対しては→仕事を任せ、なるべく相手の邪魔にならないようにする(完全なデレゲーション)他人に裁かれるより、自らを裁く機会を与えられた方が、人の精神は高められる。

Win-Winの実行協定は手段より「達成しようとしている結果(目標)」に集中しており、個人の持つ偉大な潜在能力を引き出すことができる。Win-Winの実行協定における「責任に対する報告」というのは、自己評価が原則である。大事なことは、相手が最初から自分の仕事を評価する基準作りに参加していることによって、自分自身を客観的に評価することができる。

7才の子供でも芝生を「緑で清潔」な状態に保っているかどうか自分で評価することができるのである。実行協定がきちんと出来ていれば、従業員はその枠内で自らを管理することができるのである。「私たちの管理より、彼女自身の誠実、良心、洞察力、高い信頼残高の方がはるかに優れた管理手法なのであった。娘をいちいち管理することで疲れ果てたり、こちらの思うとおりにしないときの罰を考えたりする必要などなかった。Win-Winの実行協定があったから、私たちは開放されたのである。」Win-Winの実行協定には、人を解放する偉大な力がある。

システム
組織の中では、Win-Winを支えるシステムがなければ、Win-Winは存在しない。社内の協力はとても大事である。競争やコンテストという環境の中にあって、Win-Winの精神が栄えることは出来ない。多くの場合、問題は人にあるのではなく、システムにある。たとえ善い人でも悪いシステムの中に置けば、悪い結果が出るだろう。成長して欲しい花に水を注がなければならない。人はWin-Winを考えるようになるにつれて、それを支えるシステムを作ることができるようになる。不必要な競争を必要な協力に変換させれば、効果性が大きく向上することになる。PとPCの双方を築くのだ。

プロセス
どうすればWin-Winの結果に至らせることができるか?●問題を相手の立場から見る。本当に相手を理解するように務め、相手と同じくらい、あるいはそれ以上に、相手のニーズや心配事・関心事を表現する。●対処しなければならない課題と関心事(立場ではない)を明確にする。●完全に納得できる解決には、どういう結果を確保しなければならないかを明確にする。●その結果を達成する為の新しい案や選択肢を打ち出す。

(3) 第五の習慣:理解してから理解される。

ア 感情移入のコミュニケーションの原則

人間関係で最も大切なことは?
「まず相手を理解するように務め、その後で自分を理解してもらうようにしなさい」ということである。この原則が人間関系における鍵なのである。私たちは、急いで問題の中に飛び込んで、何かのアドバイスで問題を素早く解決しようとする傾向が極めて強い。しかも多くの場合、診断する、あるいは問題を深く理解する時間をとることを忘れている。

自分の夫・隣人・同僚・友人と効果的に接し、相手に影響を与えたければ、まずその人を理解する必要がある。それはテクニックだけで、出来るものではない。あなたは、私のことを考えている、大切に思っていると言うかもしれない。私もそれを信じたいと切に願っている。しかし、あなたは私のことを理解もしていないのに、なぜ助言ができるのだろうか?それは口先だけの言葉にすぎない。そして、言葉だけでは信じることは出来ない。

イ 相手を本当に理解する為には…

「理解してから理解される」ことには、大きなパラダイム転換が必要である。話を聞いているとき、ほとんどの人は、理解しようと聞いているのではなく、答えようとして聞いているのだ。話しているか話す準備をしているか、二つに一つである。聞いている話を全て自分のパラダイムというフィルターを通して、自分の自叙伝を相手の生活に映し出しているだけである。

例えば「そうだ、そうだ。気持ちは良くわかるよ」とか、「私も同じ経験をしたんだよ。それでね…」といった具合である。(自叙伝的な聞き方)この様な人は、常に自分のホームビデオを他の人の生活に映写している。接する全ての人々に、自分がかけている眼鏡をかけさせようとする。人間関係(夫、妻、息子、娘、従業員との間など)において、問題が発生すると、決まって「相手が理解していない」という言葉で表現する。大切なことは、「相手が理解していない」ではなく、先に「自分が相手を理解する」ことである。

相手の話を聞くレベル
① 無視する。 ②聞くふりをする。 ③選択的に聞く。 ④注意して聞く。 ⑤感情移入して聞く。

ウ 感情移入→傾聴の最も高いレベル

相手を心の底から理解しようと努める。(相手の見地に立ち、相手の立場から物事を眺め、相手が見ている世界を見、相手のパラダイムを理解し、相手の気持ちを感じとる。)

感情移入の本質
相手に賛成することではなく、感情的にも知的にもその人のことを正確に理解すること。

感情移入の傾聴
信頼残高の大きな預入れとなる。それは相手を癒す力をもち、人に精神的な空気を与える。人間にとって生存の次に大きな欲求は、心理的な生存であるそれは、理解され、認められ、愛され、必要とされ、感謝されることである。感情移入をしながら人の話を聴く時、それは相手に精神的な空気を与えることになる。その大切な欲求を満たしたうえで、初めて相手に影響を及ぼしたり問題を解決したりすることに集中できるようになるのである。この精神的な空気の欲求が、人生の全ての場面に影響を与えるのだ。

処方する前に診断する
評価の鍵は理解である。直ぐに評価したり裁いたりすれば、全体的な理解に至ることはない。まず、理解しようとすることこそ、人生のあらゆる場面に作用する正しい原則である。それは、普遍にして共通の原則であるが、最も顕著に表れるのは人間関係においてである。(シロートは商品を売り、プロはニーズや関心を売る。プロは診断し、理解する方法を学ぶ。)

エ 自叙伝的な反応

人は相手を本当に理解しようとする前に、自分の過去の経験に基づいて「自叙伝的」に相手の話を聞こうとし、会話をしてしまう為に、信頼残高をなくしてしまう。つまり、多くの場合次の四つの方法で返答してしまうのである。

★評価する→賛成、もしくは反対する。★探る→自分の視点から質問をする。★助言する→自分の経験に基づき、助言やアドバイスを与える。★解釈する→自分の経験や行動をもとに相手の動機や行動を捉え、解釈し、説明しようとする。多くの親が自分の子供に近づけないのは子供を理解する前に常に探っているからに他ならない。

オ 感情移入の傾聴法とは…

感情移入の傾聴法を学ぶと、コミュニケーションが劇的に改善される。この、「理解してから理解される」ことは、「七つの習慣」のうち、最も有意義かつ即効性がある。

話の中味を繰り返す
相手の話の中味を繰り返すことによって、「注意して言葉を聞いている」と理解。「父さん、学校なんてもう嫌だよ!」「学校がイヤなんだね…」

話の中味を自分の言葉に置き換える
相手の言っている意味を自分の言葉で表現する。 (そうか、学校に行きたくないんだぁ…!)

感情を反映する
ここでは何を言っているかと言うよりも、それについてどう感じているかに注意している。相手の感情を表現する。(なんだか、イライラしているみたいだね)

内容を自分の言葉で言い、同時に感情を反映する(言葉と感情を反映する)
(学校に行きたくなくて、なんだかイライラしているようだね…!)誠意を持って、相手を理解しようとし、話の中身を自分の言葉に置き換え、感情を反映する時、相手に大きな精神的な空気を与えることができる。それは、相手が自分の思いと気持ちを整理できるように助けることになる。

あなたが本当に聴いて、そして理解しようとしていることが分かるにつれて、相手が奥底で考えている事と、実際にあなたに話していることのギャップが消えていく。魂と魂の交流が始まるのだ。相手はあることを考え、感じながら別のことを言っているのではない。やがて、彼の中に、最も大切な思いや傷つきやすい内面を、あなたに見せても良いという信頼感が出てくるのである。

自分の自叙伝とパラダイムに捉われず、自分の眼鏡を外し、相手の見地に立って、相手の観点から世界を見なければ、相手の本当の問題を理解できない。本当に理解しようとすることで、信頼残高に対して大きな預け入れができるのである。(相手の感情が反応的になる時は、「感情移入の傾聴」に戻らなければならない。)たいていの場合、人は外からの助言など必要ない。相手は本当に心の中を打ち明けることが出来さえすれば、自分の問題を自分なりに整理し、その過程で解決策も明確になってくる。

また一方で、他の人の助言や協力が必要な場合もある。鍵になるのは、相手の利益を考え、「感情移入の傾聴」をし、相手の立場で問題を理解し、その解決策を一緒に探すことである。玉ねぎの皮を一枚一枚剥くように、徐々に、柔らかい内なる核に近づいていくのである。相手が深い痛みを抱えている時に、あなたがそれを真摯な気持ちから本当に理解したいという思いで聞くなら、相手は心を驚くほど早く開いてくるだろう。

感情移入をするのに、必ずしも口を開く必要はない。逆に言葉は邪魔になることさえある。だからこそテクニックだけではダメなのだ。こうした理解はテクニックを超越している。個別のテクニックなど邪魔になるだけである。人は理解されたい。だから、理解する事にどんな時間の投資をしても、必ずそれを上回る時間の回収ができる。なぜならそれは、問題と課題に対する正しい理解と、人が深く理解されていると感じるときに発生する「高い信頼残高」をもとに、物事を進めることができるからである。

カ 理解することがWin-Winの扉を開く

特に、相手が理解しようとするパラダイムを持っていないときは、こちらから相手を理解しようとすることが不可欠。相手の事そして、相手が望んでいることを、「本当に理解しているんだ」ということを相手に示すだけで良い。相手を理解する事、話を聴く事→影響の輪(自分がコントロールできること)→インサイド・アウトのアプローチ多くの要素は、関心の輪にある(問題、意見の相違、環境条件、他人の行動)→自分でコントロール出来ない事第五の習慣は、今すぐ練習できるものだ。

次に誰かと話す時、自叙伝を一度棚上げして、誠意を持って相手を理解する努力をしてみる。相手の心を感じとり「感情移入」することは出来る。例えば…「今日は、なんだか元気ないね…」まず理解することを求めよ!!問題が起きる前に、評価したり処方したりする前に、自分の考えを打ち出そうとする前に、まず理解しようとする。それが相互依存の強力な習慣なのである。真にお互いを深く理解する時、創造的な解決や第三案の扉が開かれる。

(4) 第六の習慣:相乗効果を発揮する

ア 創造的な協力の原則:相乗効果

●人間の四つの独特の性質や、Win-Winの精神、信頼残高の預け入れ、あるいは感情移入のスキルを人生で直面する最も困難な問題の解決に集中させることにより、高いレベルの相乗効果を生み出すことが出来る。その結果は、まさに奇跡的ともいえる。新しい案が生み出され、今まで存在しなかった全く新しいものが生まれる。相乗効果こそが、原則中心リーダーシップの本質である。それは人々に内在する大きな力を引き出し、統一し、開放を促す働きをする。

●あなたが誠意を示し、自分の本当の姿、特に自分の個人的な経験や自身のなさを表現に出せば出すほど、それを聞いている相手はあなたの話を自分の経験に重ねあわせ、そこから自分自身を表現できる安心感が生まれる。あなたの正直な気持ちの表現が、相手の精神を養うのだ。その正直さが真の感情移入を起こさせ、新しい理解と知識をもたらし、コミュニケーションの過程を維持させる興奮と冒険の気持ちを生み出すのである。

イ 第三の案を探し出す

●Win-Winを考えているからこそ、第三の案を確信し、最初のいずれの提案よりも相互利益をもたらす案を探し出すことが出来るのだ。また、感情移入をしながら相手の話を聴き、まず相手を理解しようとするからこそ、結論を出すに当たって検討しなければならない価値観の相違や、相手の不安など、総合的に把握することが出来る。そして、双方が同じ理解を持つことが出来るようになる。この各要素(高い信頼残高、Win-Winの考え方、理解してから理解されるコミュニケーション)を合わせると、相乗効果を作り出す。

●相乗効果を発揮する為には、双方が満足できる解決策を見つけるまで、話し合いを続けることだ。その結果、各自が最初に提案した解決策よりも優れた案が生まれる。それは妥協をはるかに超越したものになる。(第三案を打ち出す為には、理解してから理解される、感情移入、信頼残高、Win-Winの考えの実行)

ウ 相違点を尊ぶ

相乗効果の本質は、相違点、つまり知的、情緒的、真理的相違点を尊ぶことである。相違点を尊ぶ鍵は、全ての人は世界をあるがままに見ているのではなく、自分のあるがままに見ているのだと言うことを理解することである。つまり、自分だけが世界をあるがままに見ていると思い込んでいるならば、相違点を尊ぶ気持ちにはならない。なぜなら、「間違っている人」の話を聴くだけ無駄だと感じてしまうからである。そして、ほとんどの場合、他人は枝葉末節に埋もれており、自分だけは大所高所から状況を把握しているものと思い込んでいる。そういうパラダイムを持っているとすれば、効果的な相互依存関係を作ることは不可能である。

自分の受けた条件付けからくるパラダイムによって、制限されてしまっている。本当に効果的な人生を営む人というのは、自分の見方の限界を認め、他の人のパラダイムと考え方に接することによって得られる、豊かな資源を活用する謙虚さを持っている人である。そういう人が相違点を尊ぶのは、その相違点こそが、自分の知識と現実に対する理解を増すものだと認識しているからである。自分の経験だけでは慢性的にデータ不足になってしまう、と知っているからである。「良かった!あなたは違う意見をもっている。」賛成する必要はないが、肯定することは出来る。そして、理解するように努めることが出来るのだ。相乗効果の多くの要因は、あなたの「影響の輪」の中に入っている。あなたは、障害や争いの多い環境の中にいても、自分の中で相乗効果を発揮することが出来る。

第四部 最新再生

(1) 第七の習慣:刃を研ぐ

ア バランスのとれた自己最新再生の原則

人格は、地道な長期的なプロセスによってしか形成できないものである。お互いの見方が異なっている。あなたは若い女性を見て、私は老婆を見ている。そこで、第四の習慣(Win-Win)を実践し、次のような提案をする。「私たちはこの問題を、違う観点からアプローチしているようです。両方が満足できる案を見つけることが出来るまで、まずコミュニケーションのプロセスを続けることにしましょう。そうして頂けますか?」と。ほとんどの人は合意するはずだ。

それから、第五の習慣(理解してから理解される)に移る。「まず、あなたの話を聞かせてください」、答える為に聞くのではなく、相手のパラダイムを深く徹底的に理解する為に、「感情移入の傾聴」をする。相手の意見や立場を、相手と同じくらい正確に述べることが出来るようになってはじめて、自分の意見や立場を、相手が理解できる形で述べるようにするのだ。そして両方が満足できる結果を探そうという決意と、お互いの立場に対する深い理解を踏まえたうえで、第六の習慣(相乗効果を発揮する)に移る。最初に提案していたどちらの案よりも優れていると、いずれの当事者も認める第三案を、お互いの相違点を活かして、作り出すように努力するのである。

イ 内的な安定性

それは、自分の中から生まれるものである。つまり、自分の精神と心に深く根付いた、正確なパラダイムと正しい原則に従って生活することから、もたらされるものである。インサイド・アウトの誠実、愛、自分の習慣と自分の最も深い価値観を一致させた生活からもたらされるものである。心の平安は、自分の生き方が、正しい原則とそれに基づいた価値観とに調和している時にのみ得られるものである。他の方法など、あり得ないのだ!

ウ あなたの思いが相手を動かす

私たちはものの見方を変えることで、大きく信頼残高に投資できる。本来は目に見えないその人の可能性を直視すればするほど、記憶だけに縛られるのではなく、想像力を活かして生きることが出来るようになる。相手にレッテルを貼ることをやめて、会うたびにその人を新たな観点から見て、そして、その人の新たな可能性を発見しようとする。ゲーテの言葉 「現在の姿を見て接すれば、人は現在のままだろう。しかし、人のあるべき姿を見て接すれば、あるべき姿に成長していくだろう。」

エ 成長の螺旋

●毎日の側面で、毎日少なくとも一時間の最新再生を行うことである。これこそが、「七つの習慣」を身につける鍵であり、完全にあなたの「影響の輪」に入っていることである。●人間の四つの独特な性質(肉体的、精神的、知的、私的成功)を開発できる近道はない。収穫の法則が支配しているからだ。つまり、蒔いたものを刈り取るのであって、それ以上でもそれ以下でもない。正義の法則は普遍であり、正しい原則に生活を合わせれば合わせるほど、分別は高まり、世界の本当の構造を理解し、パラダイムは正確なものになってくる。●私たちは、決意し、実行し、学んでいくプロセスを繰り返すことにより、上向きの螺旋状のスパイラルを作り出すことが出来る。

(2) 再びインサイド・アウト

「この世は環境を変えることによって人間を形成しようとするが、主は人間自体を変え、それによって人間自らの手で環境を変えられるようにする。」つまり、人間は環境によって作られるのではなく人間が環境を変えるのである。「この世は人の行動を変えようとするが、主は人の人格を変えることが出来る。」

ア 刺激と反応の間にスペースがある

「刺激と反応の間にスペースがあり」、自分はこの「反応を選択する自由」を持っている。そのスペースをどう生かすかが、私たちの成長と幸福の鍵を握っている。

私たち夫婦の間に、二つの不文律が出来上がっていった。一つは、絶対に「探らない」ということだった。相手が傷つきやすい内なる自分を表現し始めた時点で、相手に質問することをやめ、「感情移入」に徹することにした。探ることは、相手の中に無理やり立ち入り、相手をコントロールする結果を招くからだ。

私たちは全く新しい領域に入っていた。それは、不安や恐れ、あるいは疑いを非常に感じやすい領域だった。もっと深く相手の世界に入り込みたいという気持ちはあったが、相手が自分のペースで打ち明けなければならないことを理解し、その気持ちを尊重した。

二つ目のルールは、あまりにも心が痛む話になったら、その日の話はそこで終わりにすると言うものだった。翌日は、終わった所から始めるか、あるいは相手がその話を続けてもいいと感じるまで別な話題に変えることにした。たとえ、その場で解決できない話が残ったとしても、いつかそれについて話をすることが出来ると考え、急がないことにした。

つまり、「探らないこと」、そして心に痛みを感じたら一度終わらせて、しばらく時間をおくというルールである。 愛を保つ鍵は、話し合うこと、特に気持ちについて話し合うことだと、私たちは強く感じている。このインサイド・アウトのアプローチで努力するようになってからは、開かれた信頼関係を築き、アウトサイド・インのアプローチではまったく望めなかったような深く継続的な方法で、お互いの相違点を乗り越えることが出来るようになった。

イ 根本的な変化は、インサイド・アウトから起きるものである

「自分自身の思い、自分自身の考えそのものを根本から変えることが出来ない人間は、周りの世界を変えることは一切出来ない。」 根本的な変化は、インサイド・アウトから起きるものである。応急処置的な個性主義のテクニックで行動や態度といった葉っぱをいじって達成できるものではない!それは、根っ子であり、自分の考えの根源であり、自分の人格を定義し、世界を見るレンズを構成する基礎的なパラダイムそのものを変える事によってのみ、達成できるのである。

(3) 個人的な追伸

人間は自らを完成させることはできない。正しい原則に自分の生活をどれだけ合わせるかにより、私たちの中に神の力が宿り、それに応じて、自分の本来与えられた可能性を発揮することができるのである。「我々は探求をやめてはならない。そして、我々全ての探求の最後は、初めにいた場所に戻ることであり、その場所を始めて知ることである。」T・S・エリオット

読み終えての感想は、いかがでしたでしょうか?ご苦労様でした!

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